うすぐもり都のすみれ咲きにけり
きみが名か一人静といひにけり
てつせんの花のぼりけり梅の洞
慈姑の子の藍いろあまた哀しも
山吹やもの思はするよべの雨
山吹に枯枝まじる余寒かな
ふるさとや白山吹の町のうら
乳吐いてたんぽぽの茎折れにけり
たんぽぽの灰あびしまま咲きにけり
行く春や蒲公英ひとり日に驕る
瓦屑起せばほめくつくしかな
辛し菜の花はすこしく哀しからん
冬越えの梨うつくしや草の家
曲水の噴上げとなるつつじかな
さくら木にさくら一杯につきにけり
干鰈桃散る里の便りかな
桃つぼむ幼稚園までつき添ひし
花あはれ泥鰌もあそぶ芥沼
朝ごとや花掃きよせつ歯のいたみ
ほろほろとあせびの花のちる春か
おそ春の雀の頭焦げにけり
行く春や版木にのこる手毬唄
金魚売出でて春行く都かな