にごりえに菱の花咲く静かさよ
出されたる白玉に顔かいてある
一と時の合歓散る風のすさまじく
吹かれゐる睡蓮の葉の静まらず
夏萩の吹かれしなひぬ根元より
花あふひ子を負へる子はみな男
見おぼえの山百合けふは風雨かな
歯にしみる冷たき枇杷や山の茶屋
西日さす窓の日よけを締めに立つ
夏萩の花ある枝の長きかな
祖父祖母の話なつかし立版古
凌霄花や子は道の上に絵をかける
喜雨来しと団扇をもつて縁に坐す
烏瓜夜ごとの花に灯をかざし
降りつゞき避暑も終りとなるばかり
咲き並び椰から松へ烏瓜
青芝に花のうてなの落ちしきり
中庭の日足の迅き牡丹かな
夕日いま田圃にまつか濁り鮒
夕日いま高き実梅に当るなり
電車今まつしぐらなり桐の花
三段の若葉の色を数へけり
もくもくと楠の若葉も古りにけり
水馬水輪ばかりや松のかげ
花さけばどこにもありぬ立葵