和歌と俳句

加賀千代女

九重の水もまばゆし紅の花

短夜のつのる花かや紅ばたけ

涼風のはいりて見えぬ紅畠

石にしむことばのたねや梅の雨

五月雨も若葉をつつむ神路哉

短夜のうらみもどすや五月雨

けふばかり男をつかふ田植

つれよりも跡へ跡へと田うへかな

田うへ唄あしたも有に道すがら

日忌は常のかほなり田植笠

がまの穂にとぼしつけたる

つまづいて消つまづいて飛蛍

ひるは手に子供もとらぬかな

ほたる火や山路の往来おぼつかな

蚊帳つりの草や蛍のともしすて

浮草や雨のふる日も常の花

やとりおとしたる咲所

蘋を岸に繋ぐや蜘蛛の糸

藻花や濡ずにあそぶ鳥は何

むさし野に声はこもらず行々子

わき道を跡からもどる蚊遣り

分入ば風さへきえて諫鼓鳥

淋しさは闇人にこそかんことり

ほととぎすちかふ聞ばとたちつくし

ものの音水に入る夜やほととぎす