九重の水もまばゆし紅の花
短夜のつのる花かや紅ばたけ
涼風のはいりて見えぬ紅畠
石にしむことばのたねや梅の雨
五月雨も若葉をつつむ神路哉
短夜のうらみもどすや五月雨
けふばかり男をつかふ田植哉
つれよりも跡へ跡へと田うへかな
田うへ唄あしたも有に道すがら
日忌は常のかほなり田植笠
がまの穂にとぼしつけたる蛍哉
つまづいて消つまづいて飛蛍
ひるは手に子供もとらぬ蛍かな
ほたる火や山路の往来おぼつかな
蚊帳つりの草や蛍のともしすて
浮草や雨のふる日も常の花
萍やとりおとしたる咲所
蘋を岸に繋ぐや蜘蛛の糸
藻花や濡ずにあそぶ鳥は何
むさし野に声はこもらず行々子
わき道を跡からもどる蚊遣り哉
分入ば風さへきえて諫鼓鳥
淋しさは闇人にこそかんことり
ほととぎすちかふ聞ばとたちつくし
ものの音水に入る夜やほととぎす