和歌と俳句

山口誓子

寒星を見に出かならず充ち帰る

星恋のまたひととせのはじめの夜

かざしては復も春著の袖を見る

初春といひていつもの天の星

もとの世にもどる証か初写真

降るを照らし汽缶車動きそむ

焚火の辺大工の釘の散乱す

海人の子と思ひ焚火のとびかかる

見る者のかぎりとんどのあかりさし

燃ゆる中とんどの竹の穂の傾ぎ

星はみな西へ下りゆく猫の恋

名ある星春星としてみなうるむ

構内のおぼろに鉄軌岐れゆき

春月の照らせるときに琴さらふ

巣燕や眼見えざるこゑごゑに

うしろより見る春水の去りゆくを

八重桜日輪すこしあつきかな

鵜が過ぎぬいまをさかりの花の上

山の藤見て来て鉄路跨ぐかな

を見て来しが電燈黄に点る

藤の房しばらく赤き西日さす