茂吉
はるの日の ながらふ光に 青き色 ふるへる麦の 嫉くてならぬ
青麦や犬つれて和服師団長 播水
捕鯨船揚げしなぞへは麦青く 草堂
うどん一杯、青麦を走る汽車風景で 山頭火
青麦にそうて歩けばなつかしき 立子
青麦に琵琶湖見渡すはね釣瓶 立子
青麦の穂のするどさよ日は白く 鳳作
青麦や烏が歩く頭見ゆ 風生
青麦のさやぎしるけく東風つのる 草城
青麦の風の緩急暮れ遅き 草城
青麦の丘の近道知りて訪ふ たかし
青麦に心ゆとりを欲りすなり 林火
青麦の汀に燃ゆる鉋屑 欣一
青麦や墓原遠く的礫と 誓子
青麦や墓原の銘見え来る 誓子
野を行けば麦の緑のわれに従き 誓子
山の名はただ向山や麦青む 汀女
麦青し眼ゆがめて洟をかむ 誓子
麦あをむ棚田の地靄ありにけり 蛇笏
青麦の顫ふ風かげ午に入る 蛇笏
強風に吹かれて麦と吾青し 誓子
桃林はみづえをそろへ麦青む 蛇笏
麦あをみ雨中の雪嶺雲むるる 蛇笏
麦青し端山もぬるるよべの雨 蛇笏
なきひとのおもかげにたつ麦青し 蛇笏
麦青し近嶺遠嶺のたたずまひ 蛇笏
奉教の迫害の丘麦青し 青畝