和歌と俳句

月見草 待宵草

月見草百姓泣きしを思ひ出づ 波郷

橋の上のまだ夕焼けて月見草 林火

月見草飯綱山は裾長し 林火

思ひ出のひとつふたつは月見草 楸邨

月見草夕月よりも濃くひらき 

天地のあひびき長し月見草 鷹女

月見草はらりと宇宙にうらがへる 鷹女

落葉松の露に立ち濡れ月見草 たかし

月見草煤煙朝の海に降る 秋櫻子

月見草浄らかに咲き月濁る たかし

月の穢に妙にも黄なる月見草 たかし

晩涼の月見草皆咲き終る たかし

ひとを訪はずば自己なき男月見草 草田男

人の世に月見草あり夜明あり 立子

俳諧の灯ともりけり月見草 虚子

年々に月見草咲き家建たず 虚子

月見草夜発ちの船のさみしさよ 汀女

富士の霧圧倒し来る月見草 風生

鴉描いて足がふくれたよ月見草 耕衣

車窓左右月見草にて降り出せり 林火

月見草梅雨の川波かむりけり 秋櫻子

月見草うち伏すままに丘の雨 秋櫻子

月見草潮もかなひて舟出人 林火