四海波魚のきき耳あけの春
大勢の中へ一本かつをかな
しだり尾の長屋長屋に菖蒲哉
寐て起て又寐て見ても秋の暮
名月やたしかに渡る鶴の声
木がらしに梢の柿の名残かな
正月も廿日に成て雑煮哉
須磨あかしみぬ寝心やたから船
羽子板や唯にめでたきうらおもて
霜は苦に雪は楽する若菜哉
梅干じや見知つて居るか梅の花
弓杖に哥よみ顔のともし哉
此ころは新麦くるる友もあり
煮鰹をほして新樹の烟哉
蜑の子にたうとがらせん道明寺
山の端を雪にもみばや大文字
土臭き鰡にはあらずけふの月
毬栗や手に捧たる法の場
木犀の昼は醒たる香炉かな
花の秋草に喰あく野馬かな
顔出してはつみを請ん玉あられ
たまたまに引人の有赤大根
来て見れば沢庵漬の石一つ
古暦ほしき人には参らせん
年一夜きしり残さじ日の鼠
江ノ嶋の穴をうなるや秋の夢
夏祓目の行く方や淡路島