鈴木花蓑
同舟の人の見付けし蜃気楼
花園の塀の中より石鹸玉
村芝居雲雀流れて上にあり
春鹿の瞳におはす聖かな
猫の子のみな這ひ出でゝ眠りけり
源平桃地にも紅白散りみだれ
一筋や走り咲きたる小米花
藤棚も渡して庭の池の橋
出でゝ見る河原の虹や夕立晴れ
滝壺を覗いて下りる径はなし
蝙蝠や暮れぐれの佐渡まだ見ゆる
庭めぐりさうびを摘んで手にしつゝ
繋がれしまゝに無月の池の舟
浜名湖や隈なくなりし鰯雲
星祭る水車舟あり矢作川
明治節属吏となりて二十年
夜昼の菊花大会明治節
月の出て眠る山々昼のまゝ
落葉籠うもれんばかり降る落葉
武蔵野のどこまでつゞく冬木かな