和歌と俳句

加賀千代女

吹風のはなればなれやふゆ木立

冬木立あはれ一木の名のみこそ

さそふ水もなくてかくまでかれ柳

冬枯やひとり牡丹のあたたまり

ともかくも風にまかせてかれ尾花

根は切で極楽にあり枯尾ばな

降ものに根をそそぎたる蕪哉

手のちからそゆる根はなしかぶら引

いろいろを石に仕あげてかれの

枯野行人や小さう見ゆるまで

行あたり道や枯野の広きより

行あたる枯野の道の広きより

鷺の雪降さだめなき枯野哉

入相に雫もちらぬ枯野かな

又咲ふとはおもはれぬ枯野かな

何事も筆の往来や冬籠

花にとは願はず雪のみそさざゐ

鷹の目にこぼれものありみそさざゐ

竹の音まるける頃やみそさざゐ

こぼれては風拾ひ行かな

そちゆへの寝覚ではなし啼千鳥

つれに落て立横に啼や小夜千鳥

なにごとのあつて細江の千鳥哉

みななかばみみにふたせん小夜千鳥

起てゆく跡へそれほど千島哉