高井几董
ほとゝぎす古き夜明のけしき哉
月よりは上ゆくものかほとゝぎす
探幽があけぼのゝ夢や子規
伏見の夜急に更たり杜鵑
五斗俵の地をはなるゝや更衣
病ム人のうらやみ顔や更衣
町内に家振舞ありころもがへ
短夜や空とわかる ゝ海の色
短夜や伽羅の匂ひの胸ふくれ
今少しなれぬを 鮓の富貴哉
なれきとやいざとけ真木の柱鮓
沖塩のはやせを恋や蓼の雨
卯花に加茂の酸茎のにほひ哉
明いそぐ夜のうつくしや竹の月
白罌粟に煤はく家や加茂の里
筍に括り添たりしやがの花
よし吹やわか葉ながらの青簾
嵐して藤あらはるゝわか葉哉
わか葉して親と子疎き雀かな
葉桜に一木はざまやわか楓