吹上るほこりの中のはつしぐれ
雪見ゆる峰をかくして初時雨
しぐれ過て草に落来ぬ松の風
羽織着て出かゝる空の時雨かな
俳諧に古人有世のしぐれ哉
枯々て光をはなつ尾花哉
はせを忌や木曽路の痩も此ためぞ
薮寺や十夜のにはの菊紅葉
上京や月夜しぐるゝ御妙講
紅葉ちるこのもかのものわすれ花
沢菴をやらじと門の紅葉ちる
下リざまに又鐘きくや冬もみぢ
二度までは箒とりたる落葉哉
日の影の枯枝に配る落葉哉
我舟におもて合せよ都どり
闇を鳴く沖のちどりや飛ぶは星
水鳥や墓所の火遠く江にうつる
野の池や氷らぬかたにかいつぶり
貫之が船の灯による千鳥哉
夕鵆手にも来るかと淡路しま
霜いたし草鞋にはさむうつせ貝
書棚に塩辛壺や冬篭
冬の夜や我に無芸のおもひ有
茶のはなに喜撰が哥はなかりけり