和歌と俳句

原 石鼎

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初夏や渡御の神輿のさんらんと

海へ渡御の余花小神輿金づくり

余花の町に花笠人の酔ひ倒れ

麓より余花をたづねて入りにけり

門の余花とかかはりもなきお庭かな

初夏の浦の乙女ぞめじさげて

戸外れて牡丹あふちし旦かな

瓣とぢて大きく見ゆる牡丹かな

蝶よりも蜂の酔ひゐる牡丹かな

一八の屋根の藁家の灯りけり

田も畦も道も山辺もげんげかな

汽車の人つぎつぎ降りて山若葉

ほんものと見えし案山子が苗代に

山木若葉岩を包みて数十種

純白と白黄といづれ大牡丹

燕地に折々下りる牡丹かな

萱屋根に鶺鴒とまる五月かな

郭公の枝踏みかふる尾の見えし

巣燕に炭火もえゐる大炉かな

月に日に牡丹闌けたる花粉かな

美しきたらの嫩葉を摘みにけり

石獅子の闇より牡丹供養の火

煙なき牡丹供養の焔かな

供養する牡丹の焔仰ぎけり