和歌と俳句

原 石鼎

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大松の蔭の小池や夏蛙

一つ木の三ところに鳴く雨蛙

青蛙蓮の浮葉のまんなかに

田植笠近くかがやき通りけり

山田植うひとのほとりの薊かな

田植すんで泥かかり居る薊かな

代掻の牛躍り込む山田かな

早乙女や麦焼く人に笑み通る

この水を引いて田を植う乙女かな

海近き家の小池や水馬

さし潮にのりて澄み居り水馬

短艇庫のほとりの水や水馬

青芒目には見えねど神の影

青芒そこに憩へる神一人

青芒そこに憩ねる神の影

青芒へもてゆく馬鼻のそこらまで

草原やひらめきそめし蚊喰鳥

宙に舞ふ干潟の鳶や青嵐

青嵐梅雨曇るより吹きそめし

夏帽子折から通る大汽船

我に敏き人の夏帽新しき

老鶯や山ふところの深みより

老鶯やこの道山へ向ひたる

ゆくほどに巌容変る夏木立

老鶯やもも鳥杉に啼かぬまへ