大松の蔭の小池や夏蛙
一つ木の三ところに鳴く雨蛙
青蛙蓮の浮葉のまんなかに
田植笠近くかがやき通りけり
山田植うひとのほとりの薊かな
田植すんで泥かかり居る薊かな
代掻の牛躍り込む山田かな
早乙女や麦焼く人に笑み通る
この水を引いて田を植う乙女かな
海近き家の小池や水馬
さし潮にのりて澄み居り水馬
短艇庫のほとりの水や水馬
青芒目には見えねど神の影
青芒そこに憩へる神一人
青芒そこに憩ねる神の影
青芒へもてゆく馬鼻のそこらまで
草原やひらめきそめし蚊喰鳥
宙に舞ふ干潟の鳶や青嵐
青嵐梅雨曇るより吹きそめし
夏帽子折から通る大汽船
我に敏き人の夏帽新しき
老鶯や山ふところの深みより
老鶯やこの道山へ向ひたる
ゆくほどに巌容変る夏木立
老鶯やもも鳥杉に啼かぬまへ