和歌と俳句

原 石鼎

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故山旧雨と誰れか言ひけむ鮎の宿

夏山や夕に間ある昼の月

夕立や簾つらねて灯の館

夕立や見えかくれする波間の灯

さかのぼる流燈やがて瀬に出でたり

八重木槿来めぐる綾の黒羽蝶

夕立や膝組みゐたる簾内

夕立に浄めたまひぬこの芝生

噴水によるや白扇ひらひらと

抜き草へ跳び来る雀夏の露

練雲雀日出づる方へ向いて啼く

老鶯人丸の宮のほとりより

赤土よしそこに神さび松涼し

古りたれど丹濃き涼しき神なりき

頂や海をうしろにすゞし神

噴水をいただきて闇の大いなる

葛水や夜陰の苔をまのあたり

賤が家に飼はれて老いし金魚かな

藻の中に久しく尾ある金魚かな

飼鳩のむれとぶ下や金魚池

金魚売穂麦の中を通り来る

箱庭や傍にたつ松の幹

箱庭に寄る大いなる子等の影

さきがけし花こまやかや百日紅

雀やがて百日紅の花の中