和歌と俳句

紫陽花 四葩

紫陽花の雨褪せや芝に蝉落ちて 碧梧桐

水惜む宿の四葩に蘆立ちて 碧梧桐

茂吉
病監の 窓のしたびに 紫陽花が咲き 折をり風は 吹き行きにけり

牧水
うす藍のいまは褪せなむあぢさゐの花をまたなくおもふ夕暮

牧水
家のうち机のうへの紫陽花のうすら青みのつのる真昼日

紫陽花に八月の山たかからず 蛇笏

紫陽花に夏痩人の足袋白し 麦南

雷去つて四葩に日あり水荷ふ 麦南

千樫
まひる日にさいなまれつつ匂ひけりやや赤ばめる紫陽花のはな

葉隠れに土恋ふ四葩淋しめり 石鼎

あぢさゐやなぜか悲しきこの命 万太郎

つれづれの小簾捲きあげぬ濃紫陽花 久女

紫陽花や田舎源氏の表紙裏 虚子

水上げぬ紫陽花忌むや看る子に 久女

紫陽花に秋冷いたる信濃かな 久女

濃霧晴れし玻璃に映れる四葩かな 久女

紫陽花の白とは云へど移る色 石鼎

日の下や紫陽花濃くも垂れ籠る 石鼎

紫陽花や風雨の中の藍微塵 喜舟

迢空
紫陽花の まだととのはぬうてなに、花の紫は色立ちにけり

迢空
あぢさゐの蕾ほぐれず 粒だちて、うてなの上に みち充ちにけり

牧水
立ち掩ふ木々の若葉の下かげにそよぎて咲ける山あぢさゐの花

牧水
花ちさき山あぢさるの濃き藍のいろぞ澄みたる木の蔭に咲きて

牧水
幹ほそく伸びたちたればそよ風にそよぎやはらかき山あぢさゐの花

耕平
しめじめと梅雨のなごりの風吹けり片山道に揺るる紫陽花

耕平
深青葉雨をふくめる下かげにひとむら白しあぢさゐの花

釈迢空
金曜日の昼饗の卓に、咲き満ちて、円かにむかふ━。紫陽花の碧

釈迢空
たゝかひの最中に訣れ 三年経つ━。かく咲きけるか。紫陽花のはな

釈迢空
行くへなき 炎中の別れせし日より、泣けてならざる今朝の 紫陽花

紫陽花に軽き病や髪を梳く 淡路女

裏山へ咲きのぼりたる四葩哉 風生