和歌と俳句

與謝蕪村

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

初しぐれ眉に烏帽子の雫哉

古郷にひと夜は更るふとんかな

咲べくもおもはであるを石蕗の花

加茂人の火を燧音や小夜鵆

たんぽぽのわすれ花あり路の霜

われぬべき年もありしを古火桶

我も死して碑に辺せむ枯尾花

水仙や寒き都のこゝかしこ

待人の足音遠き落葉

菊は黄に雨疎かに落葉かな

古寺の藤あさましき落葉

往来待ちて吹田をわたる落ば

木枯や鐘に小石を吹あてる

冬されや小鳥のあさる韮畠

霜あれて韮を刈取翁かな

買て枯木の中を帰りけり

ひともじの北へ枯臥古葉哉

其むかし鎌倉の海に鰒やなき

洗ふ流れもちかし井出の里

雪折も聞えてくらき夜なる哉

白炭の骨にひゞくや後夜の鐘

木屋町の旅人訪ん雪の朝

住吉の雪にぬかづく遊女かな

からざけや小野の薄もかれてのち

乾鮭の片荷や小野の炭俵