初しぐれ眉に烏帽子の雫哉
古郷にひと夜は更るふとんかな
咲べくもおもはであるを石蕗の花
加茂人の火を燧音や小夜鵆
たんぽぽのわすれ花あり路の霜
われぬべき年もありしを古火桶
我も死して碑に辺せむ枯尾花
水仙や寒き都のこゝかしこ
待人の足音遠き落葉哉
菊は黄に雨疎かに落葉かな
古寺の藤あさましき落葉哉
往来待ちて吹田をわたる落ば哉
木枯や鐘に小石を吹あてる
冬されや小鳥のあさる韮畠
霜あれて韮を刈取翁かな
葱買て枯木の中を帰りけり
ひともじの北へ枯臥古葉哉
其むかし鎌倉の海に鰒やなき
雪折も聞えてくらき夜なる哉
白炭の骨にひゞくや後夜の鐘
木屋町の旅人訪ん雪の朝
住吉の雪にぬかづく遊女かな
からざけや小野の薄もかれてのち
乾鮭の片荷や小野の炭俵