玉川のうた口ずさむ鰒の友
海のなき京おそろしや鰒汁
乗物をしづかに居る落葉かな
屋根ふきの落葉を踏や閨のうへ
浦千鳥草も木もなき雨夜かな
茶ぶくろを捨るところも落葉かな
目前をむかしに見する時雨哉
勝手まで誰が妻子ぞ冬ごもり
炭うりに鏡見せたる女かな
凩やこの頃までは荻の風
山水の減るほど減りて氷かな
大鼾そしれば動く海鼠かな
海鼠にも鍼こゝろむる書生哉
こがらしや覗いて逃ぐる淵の色
こがらしや何に世わたる家五軒
凩や広野にどうと吹起る
あなたうと茶もだぶだぶと十夜哉
裾に置て心に遠き火桶かな
宿かさぬ火影や雪の家つゞき
皃見せや夜着をはなるゝ妹が許
かほ見せや既にうき世の飯時分
静なるかしの木はらや冬の月
寒月や門なき寺の天高し
寒月や鋸岩のあからさま