和歌と俳句

炭 太祇

塀越の枯野やけふの魂祭

行馬の人を身にする枯野かな

なつかしや枯野にひとり立心

鼠喰ふ鳶のゐにけり枯柳

帰来て夜をねぬ音や池の

草の屋の行灯もとぼす火桶

塩鱈や旅はるばるのよごれ面

勤行に起別たる湯婆かな

茶の花や風寒き野の葉の囲ミ

口切や花月さそふて大天狗

口きりやこゝろひそかに聟撰ミ

菊好や切らで枯行花の数

ちどり啼暁もどる女かな

吹きやす胸はしり火や卵酒

鴨の毛を捨るも元の流かな

胴切にしもせざりける海鼠かな

身を守る尖ともみえぬ海鼠哉

立波に足みせて行ちどりかな

草の庵童子は炭を敲く也

水仙や胞衣を出たる花の数

曲輪にも納豆の匂ふ斎日哉

僧と居て古び行気や納豆汁

御命講の華のあるじや女形

人の来て言ねばしらぬ猪子哉

はつ雪や酒の意趣ある人の妹