塀越の枯野やけふの魂祭
行馬の人を身にする枯野かな
なつかしや枯野にひとり立心
鼠喰ふ鳶のゐにけり枯柳
帰来て夜をねぬ音や池の鴛
草の屋の行灯もとぼす火桶哉
塩鱈や旅はるばるのよごれ面
勤行に起別たる湯婆かな
茶の花や風寒き野の葉の囲ミ
口切や花月さそふて大天狗
口きりやこゝろひそかに聟撰ミ
菊好や切らで枯行花の数
ちどり啼暁もどる女かな
吹きやす胸はしり火や卵酒
鴨の毛を捨るも元の流かな
胴切にしもせざりける海鼠かな
身を守る尖ともみえぬ海鼠哉
立波に足みせて行ちどりかな
草の庵童子は炭を敲く也
水仙や胞衣を出たる花の数
曲輪にも納豆の匂ふ斎日哉
僧と居て古び行気や納豆汁
御命講の華のあるじや女形
人の来て言ねばしらぬ猪子哉
はつ雪や酒の意趣ある人の妹