御次男は馬が上手で雪見かな
里へ出る鹿の背高し雪明り
長橋の行先かくす雪吹かな
寒月や我ひとり行橋の音
寒月の門へ火の飛ブ鍛冶屋哉
駕を出て寒月高し己が門
鍋捨る師走の隅やくすり喰
枯草に立テは落る囹かな
氷つく芦分舟や寺の門
御手洗も御灯も氷る嵐かな
垣よりに若き小草や冬の雨
父と子よよき榾くべしうれし顔
勤行に腕の胼やうす衣
死ぬとしもひとつ取たよ筆の跡
積物や我つむ年をかほ見せに
大名に酒の友あり年忘れ
夢殿の戸へなさはりそ煤払
声立る池の家鴨やすゝ払
煤を掃く音せまり来ぬ市の中
す ゝ掃の埃かつぐや奈良の鹿
怖す也年暮るよとうしろから
唐へ行屏風も画やとしの暮
年の暮嵯峨の近道習ひけり
歳のうちの春やいざよふ月の前