和歌と俳句

炭 太祇

御次男は馬が上手で雪見かな

里へ出る鹿の背高し雪明り

長橋の行先かくす雪吹かな

寒月や我ひとり行橋の音

寒月の門へ火の飛ブ鍛冶屋哉

駕を出て寒月高し己が門

鍋捨る師走の隅やくすり喰

枯草に立テは落る囹かな

氷つく芦分舟や寺の門

御手洗も御灯も氷る嵐かな

垣よりに若き小草や冬の雨

父と子よよき榾くべしうれし顔

勤行に腕の胼やうす衣

死ぬとしもひとつ取たよ筆の跡

積物や我つむ年をかほ見せに

大名に酒の友あり年忘れ

夢殿の戸へなさはりそ煤払

声立る池の家鴨やすゝ払

煤を掃く音せまり来ぬ市の中

す ゝ掃の埃かつぐや奈良の鹿

怖す也年暮るよとうしろから

唐へ行屏風も画やとしの暮

年の暮嵯峨の近道習ひけり

歳のうちの春やいざよふ月の前