和歌と俳句

炭 太祇

掃けるが終には掃ず落葉かな

壁までが板であられの山居哉

鳴ながら狐火ともすかな

初霜やさすが都の竹箒

はつ雪や町に居あはす桑門

はつ雪や医師に酒出す奥座敷

医師へ行子の美しき頭巾かな

盃を持て出けり雪の中

ゆきをみる人さわがしや夜の門

犬にうつ石の扨なし冬の月

かさの雪たがひに杖で打はらひ

よるのゆき寐よともいわぬ主哉

口切のとまり客あり峯の坊

寒ぎくや垣根つゞきの庵の数

其魂の朱雀もめぐる枯野

今朝は先消てみするや初氷

身をよする冬の朝日の草のいほ

藤棚のうへからぬける落ばかな

水せんや幸あたりに草もなき

くらがりの柄杓にさはるかな

さむき夜や探れば窪き老が肩

水仙や茎みじかくと己が園

顔みせの難波のよるは夢なれや

寒声や親かたどのゝまくらもと

寒菊や茂る葉末のはだれ雪