掃けるが終には掃ず落葉かな
壁までが板であられの山居哉
鳴ながら狐火ともす寒かな
初霜やさすが都の竹箒
はつ雪や町に居あはす桑門
はつ雪や医師に酒出す奥座敷
医師へ行子の美しき頭巾かな
盃を持て出けり雪の中
ゆきをみる人さわがしや夜の門
犬にうつ石の扨なし冬の月
かさの雪たがひに杖で打はらひ
よるのゆき寐よともいわぬ主哉
口切のとまり客あり峯の坊
寒ぎくや垣根つゞきの庵の数
其魂の朱雀もめぐる枯野哉
今朝は先消てみするや初氷
身をよする冬の朝日の草のいほ
藤棚のうへからぬける落ばかな
水せんや幸あたりに草もなき
くらがりの柄杓にさはる氷かな
さむき夜や探れば窪き老が肩
水仙や茎みじかくと己が園
顔みせの難波のよるは夢なれや
寒声や親かたどのゝまくらもと
寒菊や茂る葉末のはだれ雪