和歌と俳句

正岡子規

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

間違へて笑ふ頭巾や客二人

炉開きや故人を会すふき鱠

冬籠る今戸の家や色ガラス

芭蕉忌や吾に派もなく伝もなし

一箱の林檎ゆゆしや冬籠

雑炊のきらひな妻や冬籠

冬ごもる人の多さよ上根岸

日あたりのよき部屋一つ冬籠

咲き絶えし薔薇の心や冬籠

冬籠盥になるる小鴨哉

鶏頭の黒きにそそぐ時雨かな

口こはき馬に乗りたる

道哲の寺を過ぐれば冬田哉

山茶花に新聞遅き場末哉

霜月の梨を田町に求めけり

のびのびし帰り詣でや小六月

のら猫の糞して居るや冬の庭

煤払の埃しづまる葉蘭哉

天井無き家中屋敷や煤払

年忘一斗の酒を尽しけり

吉原ではぐれし人や酉の市

結びおきて結ぶの神は旅立ちぬ

風呂吹の一きれづつや四十人

千駄木に隠れおほせぬ冬の梅