和歌と俳句

川端茅舎

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玉霰幽かに御空奏でけり

玉霰錦木の実もうちまぢへ

降り止んでひつそり並ぶかな

玉あられまこと小さくちいさくて

咳かすかかすか喀血とくとくと

そと咳くも且つ脱落す身の組織

冬晴れを我が肺は早吸ひ兼ねつ

冬晴をまじまじ呼吸困難子

冬晴をすひたきかなや精一杯

病床の手鏡笹子生写し

病床の手鏡に逆枯芭蕉

日天子寒のつくしのかなしさに

寒のつくしたづねて九十九谷かな

寒の野につくしをかほどつまれたり

寒の野につくしつみますおんすがた

蜂の子の如くに寒のつくづくし

約束の寒の土筆を煮て下さい

寒のつくしたうべて風雅菩薩かな

金柑百顆煮て玲瓏となりにけり

金柑は咳の妙薬とて甘く

普門品よみをればいでざりき