霜柱この土をわが墳墓とす
焼夷弾あかあかひらき年明けぬ
焼夷弾爆ぜて枯木の形立つ
冬梅や喜悲をわすれしにはあらず
初明り高射砲音とどろくとき
冬雲にたたかへる間も地球めぐる
胸うづくまで冬竹の青かりし
踏めば鳴る落葉の下の霜柱
笹鳴や崖の一日音もなく
水仙にとどかざる日と暮れにけり
生きてゐて氷下に金魚うごきたり
凍てはててゐしゆゑ心一筋に
爆痕より凧を冬日にあげてをり
追羽子や背にからからと鉄兜
ひときれの餅をわけあふ空襲下
冬雲や北斗杓より没し去る
暁の冬雲星を吐きにけり
明けそめてゐて寒雀まだ見えず
子がかへり一寒燈の座が満ちぬ
鷦鷯ひそかに過ぎし午前午後
童等のうつくしき目や枯木立つ
靴底のあたたまりをり寒椿
枯笹に大いなる星灯りけり
星の位置たしかめあふぐ霜柱