寒すずめとび立つひびき硝子戸に
雨さむく打つおのおのの鉄兜
森落葉見つむる木菟の眼やあらむ
炭の木目にささりゐし枯葉わびしめり
街夜色時雨は海へ去りてゆく
冬雁に水を打つたるごとき夜空
いちまいの枯葉を肩に霜夜来ぬ
北風いそぐやひとをあざむき了せたり
雲いらつ三日月に道氷るべし
冬木よぎるときつぶやきとなりにけり
埋火に月下戻りし身を伏せぬ
冬の日や河床にまがふ道の澄み
港かけて雪の華やぎ降るに立つ
まぎれなき千鳥を浜に追ひにけり
巌がたたふる冬潮入日うすくなる
雪の夜の電球の裡音こもる
双の耳張りてさかしげ冬日の牛
椋鳥渡る山に焚火を消しをれば
焚く落葉まなかより煙あげそむる
赤松のはづれの幹の冬日かな
枯野雲わが真上より四方に垂れ
冬日うけみなかがやける子供の頭
水涸れてまじはりもまた浅く栖む
火事明り道のみかんの皮染めぬ
根を張りてやすらぎゐるや大冬木