冬濤の左右に走せ入る岬に立つ
洋中に國極まれり時雨ふる
黒潮の潮路さだかに時雨ふる
時雨雲散り乱りつつみ埼照る
遠海の遠埼晴れて時雨ふる
雪来るや群嶺駒ケ嶽の余威をかり
新雪を一浴したる駒ケ嶽と会ふ
駒ケ嶽の雪仰ぎ寝覚ノ床を見下ろしぬ
眼を閉ぢて駒ケ嶽の雪照る炬燵かな
眠りゐる檜山は余木あらしめず
冬潮のせせり上げくる埼の宿
思ひ屈し寒さに屈し今日を居り
盛り上がる紅き炭火にかぶさりぬ
寒き家に住み馴れがほや置炬燵
漬菜食ふ木曽檜箸かぐはしみ
沢冰りしみ立つ檜肌むらさきに
眼つむれば駈けりゐる血や日向ぼこ
ともしき血溶けて流るる日向ぼこ
けふの日の燃え極まりし日向ぼこ
撫で下す顔の荒れゐる日向ぼこ
三つ飼ふ猫の出入りの日脚伸ぶ
避けがたき寒さに坐りつづけをり