和歌と俳句

松本たかし

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東京の上の冬雲襤褸のごと

今日会へばまた散り散りや冬の雲

預けある鼓打ちたし冬の梅

春待つや舞扇なく鼓なく

借りし書の返しがたなく春隣

霜柱倒るる光明滅し

霜柱次第に倒れいそぐなり

霜の塔荘厳なりし倒れ消ゆ

霜の塔日日玲瓏と生滅し

安らかに住めるに似たる障子の灯

桑枯れて天龍河原遠白く

日に向いて葉を起こしをる冬菜かな

飯食うてしのぐ寒さや昨日今日

頭上過ぐ嘴脚紅き都鳥

行き消えて又行き消えて枯野人

山垣やひとり雪置く遠浅間

火の山の雪の浄衣や嶺嶺の上

枯桑に雪ありそめて利根細る

雪山と降る白雪と消し合ひぬ

快晴の雪嶺を観る欄の雪

軒氷柱下がり雪嶺突き立ちぬ

雪嶺の最高峰に向へる眼

雪嶺の歯向ふ天のやさしさよ

雪嶺の無言に充てる太虚かな

空の紺氷柱の瑠璃に深雪晴