木枯や昼の酒のむ二人きり 鴻村
こがらしの家百姓のちちとはは 鴻村
木枯や林の底の水に月 石鼎
不器男
凩や倒れざまにも三つ星座
凩や赤城の神は火の中に 喜舟
凩や崖下はよき日向ぼこ 喜舟
凩や漁翁が鯉の美しき 喜舟
凩や築地の内の藪の音 喜舟
凩や里の子遊ぶ九品仏 喜舟
山頭火
凩に焼かれる魚がうごいてゐる
山頭火
凩に明るく灯して母子です
山頭火
凩のラヂオをりをりきこえる
山頭火
凩、餅がふくれあがる
山頭火
木枯やぼうぼうとしてゐる
山頭火
もう凩の、電燈きえたりついたり
山頭火
凩のふけてゆく澄んでくる心
風生
凩や媼もすなる頬被り
山頭火
木枯の身を責めてなく鴉であるか
茅舎
木枯に真珠の如きまひるかな
誓子
こがらしの夜の岐谷にわれ等住む
茂吉
吹きすさぶ山のこがらし一冬をとほすと思へ堪へがてなくに
凩の白雲ひとつ光りてゆけり 多佳子
凩は地に鳴り路を白らめたる 多佳子
凩は遠き地に鳴り地下をゆく 多佳子
素逝
木枯が遠くの森をわたる音
楸邨
紫宸殿何に音ある凩ぞ
楸邨
ふりかぶる一本の木の凩を
木枯や我をむかふる人あらば 占魚
木枯や古き港の草屋町 月二郎
凩の天ダイナモも鳴りとよむ 多佳子
東京に凩の吹きすさぶかな 万太郎
木枯のひとは奈落に灯を抱き 赤黄男
巨星隕ちぬ凩しんと身に透る 友二
凩や居退りて遠き人の上 友二
こがらしが峯を降り来て吹き通る 波津女
凩や牛の鼻先向きかはる 楸邨
木枯や消しのこしある厩の灯 占魚
木枯やそれぞれ似たる馬の顔 占魚
木枯のひととき夕焼つのり来る 多佳子
凩がやや中天を群れて過ぐ 誓子
こがらしや火星高きへなほ登る誓子
ことごとく木枯去つて陸になし 誓子
海に出て木枯帰るところなし 誓子
木枯や為すことありて夜を更かす 波津女
林火
夕木枯ともれば機械いきいきす
林火
こがらしの樫をとらへしひびきかな
林火
こがらしきく世に背くにはあらねども
林火
こがらしの樫をとらへしひびきかな
楸邨
凩の吹き緊りたる顔に逢ふ
楸邨
凩や空に爆ぜゆく生御魂