みづから青き水傲慢や烏瓜
頂髪欠けて鬢髪ゆらぐ鵙の晴
曼珠沙華「末期の眼」こそ燃ゆる筈を
大人すげなく子供しつこし菊の金
茶の花や竹の枝靡きてすぐ復る
状受けに秋日すべらす状斜め
秋水や文字刷る音は息せき切り
秋水一枚新聞大葉妻拡ぐ
月の面平ら吾子満ち満つる月の頬
孤児肘を挙げぬ返しの寒風に
寒風に孤児なに物もなきところ
岡持の中ぬくからん枯欅
状出しに出れば寒げの人五三
魚の肌主婦の生肌夕冷えて
臼いただきに白餅成りて妻潔し
行く年やヨルダン受洗主あやに若し
「貧者の一燈」こごえ育てる生命の義
よろしき代の冬日の場末歩き得たし
歌留多散らばり今さら蔵書とぼしさよ
初日差月桂樹越し軒端しのぎ
南へ歩むよさながら日向ぼこ
枯芝瞭然おもてもうらも愚かな碑
炬燵さめて我家に男の世界一つ
勝ち負けのみ誇なき世や雪ちらつく