埋葬行夜の白服に白釦
西へゆく白鷺なれや車窓ぞひ
白鷺の羽搏ちや呼ぶごと拒むごと
青田白鷺市女笠めく墳一つ
寺清水もつれ流れて末濁らず
露の鐘鳴るとき母よ子を信ぜよ
羊歯多き林泉白雨突如せはし
夏花買ふ幻住庵址に紅点ぜん
青田段丘山墓詣りの道に似て
畦豆しげり行く径いよいよ嶮しうれし
雀逃げ宿かし鳥は夏天来る
我が供華真赤椎落葉から藪柑子
椎夏木片ひろがりのその下虚し
椎夏木仰ぎて独り胸さわぎ
父母既になくて頼みし椎夏木
頼まれし身が慕ふさま椎夏木
松根太くも椎根細くも露さまざま
澄むことに一生を懸けし人の泉
諸手さし入れ泉にうなづき水握る
船よりのたけき玉歩の址夏草
汝が故郷とく見よとてや西日展ぶ
夜目に故郷の土の白さよ暑さ厚く
蛍火や遺骨の重さやや手慣れ