我が前に坐る子小さき炬燵かな 淡路女
トラムプの崩れちらばる置炬燵 虚子
徒らに炬燵熱うす独居かな 淡路女
神棚の燈のふもとなる炬燵かな 石鼎
恋ふ心悔ゆる心や置炬燵 占魚
横顔を炬燵にのせて日本の母 草田男
炬燵嫌ひながら夫倚る時は倚る 貞
乳房もて顔うちなぶる炬燵かな 蛇笏
恵那颪一日すべなき炬燵かな たかし
あたたかき深き空洞の炬燵かな たかし
山を見て夕べまで居る炬燵かな たかし
獄を出て炬燵愛しむ膝頭 不死男
炬燵居の背中に夕日俄かなり 林火
書読むは無為の一つや置炬燵 虚子
聞き役の炬燵話の一人かな 虚子
炬燵出ずもてなす心ありながら 虚子
句を玉と暖めてをる炬燵かな 虚子
鏝さしてぬるき炬燵よ妹が宿 蕪城
御馳走の熱き炬燵に焦げてをり 虚子
渓音と炬燵のぬくさ絶え間なし 草田男
老いてゆく炬燵にありし或日のこと 虚子
日がなゐて夕しづもりの炬燵かな たかし
妻と居て孤ろごころの炬燵かな たかし
世の様の手に取る如く炬燵の間 虚子
炬燵の間母中心に父もあり 立子
贈り来し写真見てをる炬燵かな 虚子
炬燵あり城に籠るが如くなり 虚子
我が仕事炬燵の上に移りたる 虚子
耳遠く病もなくて火燵かな 虚子
炬燵さめて我家に男の世界一つ 草田男
炬燵板「上人伝記」のせて読む 青畝
高齢と相炬燵して従者めく 不死男
消しゴムさみし炬燵の中の暗い足 不死男
初炬燵して火の東歌を読む 不死男
旅の興はじまる火燵板の大 爽雨