和歌と俳句

高橋淡路女

炭火吹く口尖らして人あはれ

樹海よりけぶり立ちけり炭竃

夕焚火火の粉華やぎ散りにけり

木の葉髪ほどけばピンの五六本

年の瀬やもの買う人に夜の雨

なごやかに羽子板市の人出かな

山茶花や愁ひをわかつ子と住める

山茶花や日向に咲いて花多き

八つ手咲いて月光土にしむ夜頃

白妙の雪の傘さし人きたる

窓の日の暮れかねてありにけり

糟汁に酔うてhかなし独り住

悲しめば我れに冬日のいと親し

凍て蝶のとまりかたぶく翅かな

風花の降りくる空のいと蒼し

寒紅や過ぎし世を恋ふ古暦

毛絲編む横顔のよし竊み見る

徒らに炬燵熱うす独居かな

酉の市福財布とて婆も買ふ

酉の市そのお神楽の馬鹿熊手

派手やかに〆て熊手の売れにけり

大熊手売れし手打ちの又聞ゆ

金箔に風きらきらと熊手店

風寒し熊手のおかめ頬白う

口紅や熊手のおかめ賢げに