和歌と俳句

古泉千樫

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おり立ちて家のまはりをわれは見つ垣根の桃は咲きそめにけり

おぼろ夜の村の長みち嫁入のむれにまじりてわが歩みゆく

冬の夜はまよなかならむ目ざむればやがて咳いでてとどまらなくに

たづね来む人たれならむわが室に深くさしたる冬の日のかげ

耕平と角力の話をせしことを今病みてうぃておもひいでつも

蜜柑畑の雑草がなかにこんにやくいも茎ほそぼそと立てるさびしさ

あざやけき春の日和なり枕べに訪ひ来る人らみな汗ばめり

室の障子あけてもらひて春日さす高き梢をわれは見にけり

牀の上に吾起きてあらむ三月の真昼の風の吹き入るものを

えんがはにわが立ち見れば三月の光あかくり木木ぞうごける

春日てる前の通りのしめり道あゆみ行く人の影のさやけく

さしなみのとなりの家の早起の音にくからぬ春の朝なり

墓原に咲けるれんげう木瓜つばきしきみの花も見るべかりけり

わが子らとかくて今日あゆむ垣根みちぺんぺん草の花さきにけり

雹まじり苗代小田にふる雨のゆゆしくいたく郷土をし思ほゆ

雷雨すぎて街のこひしき山の手の若葉がうへに月押してれり

空気のよき海べをよしと思へどもゆきえざるらしまづしくて病めば

いとまあるわれと思へや起きあがりていにしへ人の碁をならべ居り

われひとりいにしへ人の碁をならべつつ石の音こそうれしかりけれ

かみなりのとどろなるなべに寄りくる子らやわれはやめるに


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