和歌と俳句

古泉千樫

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日の光あたたかければ外に出でて今日は歩めりしばらくのあひだ

み冬つき春の来むかふ日の光かくて日に日に吾れは歩まむ

きさらぎのひるの日ざしのしづかにて栴檀の實は黄に照りけり

枯木みな芽ぐまむとする光かな柔らかにして息をすらしも

あゆみ来てこころ親しも春日さす合歓の梢に枯莢の垂れて

いく年の散歩になれし墓原や今日あゆみ居るわれは病めるに

小櫃川夕立ふりて濁る瀬のながるる泡を見るがすがしさ

隧道の崩れ居しかばわが越ゆる山の草原夕日てりたり

露の音たえまなくしてこの山のあかつき近くなりにけらしも

あかつきの露おきてみてる谷あひのをちこち白し烏瓜の花

大杉の露のしづくの光りつつみ寺の庭は明けにけるかも

下りきつつ薄のかげにとまりたる 鹿の目見こそやさしかりしか

わが村の学校園の櫻紅葉うつくしくしてよき日和なり

柿もみぢ櫻もみぢのうつくしき村に帰りてすこやかにあり

墓原の朴の木の實のくれなゐに色づく見れば秋たけにけり

命ありて今年また仰ぐ秋の空げにうつくしく高く晴れたり

夕づく日赤くさしたる朴の木の廣葉うごかし秋風吹くも

わが待ちし秋は来りぬ三日月の光しづけくかがやきにけり

さわやけき九月となりぬ封切のよき活動写真も吾れは見なくに

秋の雨ひねもす降れり張りたての障子あかるく室の親しも

塀の上の八つ手の花の青白く光つめたき冬さりにけり

この冬をつつがなくしてすぎたらばまことすこやかになりなむものを


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