和歌と俳句

長谷川素逝

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南京を屠りぬ年もあらたまる

福寿草掘るとて兵ら野をさがす

南京城内にして鳥の巣のかかる樹を

しづかなる空がまいにち枯木の上

防寒靴下妻あみしかとおもひてはく

かの旗を靴もて春泥にふみにじらんか

たんぽぽやいま江南にいくさやむ

やけあとに民のいとなみ芽麦伸ぶ

目をつむりはろばろ来ぬる枯野あり

かの丘にこれの枯野に友ら死にき

彼をうめしただの枯野を忘るまじ

朝濡るる落葉の径はひとり行かな

落葉ふかしけりけりゆきて心たのし

さくらはや かたき小さき 芽をもちぬ

流氷のかがやきのなかを航くしづか

氷の海むらさきはしり日ののぼる

氷の原春はちかしと日を浴ぶる