和歌と俳句

種田山頭火

前のページ< >次のページ

蝉時雨もう枯れる草がある

けふまでは生きてきたへそをなでつつ

へちまよ空へのぼらうとする

うまくのがれためが花にとまつてゐる

ほろりとひかつて草の露

けふも暑からう蓮の花咲ききつた

ここも空家で糸瓜の花か

夕立晴れた道はアスフアルトの澄んだ空

やつぱりお留守でのうぜんかづら

雑草のよろこびの雨にぬれてゆく

はたらいてきて水のむ

自動車が通つてしまへば群とんぼ

雨が洗つていつたトマトちぎつては食べ

いつも見て通る夾竹桃のなんぼでも咲いて

ぬれてなくよもう晴れる

向日葵や日ざかりの機械休ませてある

すつかり好きになつたトマトうつくしくうれてくる

灯れば青葉のしたしい隣がある

ほうけすすきのいつまでも秋ちかし

あぶら蝉やたらに人が恋ひしうて

子のことは忘れられない雲の峰

黒い蝶白い蝶夏草はしげる

ぼろきてすずしい一人があるく

蝉しぐれあふれるとなくあふれてゐる水

ながい豆も峠茶屋のかなかな