鉄塊の疲れを白き蚊帳つつむ
山削る裸の唄に雷加はる
唄一節晩夏の蠅を家族とし
青葡萄つまむわが指と死者の指
眠おそろし急調の虫の唄
海坂に日照るやここに孤絶の茸
仕事重し高木々々と百舌鳥移り
雲厚し自信を持ちて案山子立つ
抱き寝る外の土中に芋太る
饅頭を夜霧が濡らす夜の通夜
坂上の芋屋を過ぎて脱落す
大枯野壁なす前に歯をうがつ
死後も貧し人なき通夜の柿とがる
孤児孤老手を打ち遊ぶ柿の種
冬の山虹に踏まれて彫深し
電柱も枯木の仲間低日射す
滅びざる土やぎらりと柿の種
寒き田へ馳くる地響牛と農夫
真夜中の枯野つらぬく貨車一本
冬かぶさる家に目覚時計狂ひ鳴る
屋上に双手はばたき医師寒し
書を読まず搗き立ての餅家にあれば
冬雲と電柱の他なきも罰
寒明けの街や雄牛が声押し出す