和歌と俳句

平畑静塔

恋猫の発する声をミサに容れ

春の雪遠き地上の襤褸に降る

老の鼻つつむ花びら復活祭

薔薇の棘裾をとどめぬ茂吉の死

荒金の煖炉かげろふ茂吉の死

新燕を空にとどめて嫁きがたし

花吹雪電工の眉こそばゆし

初蝶や鐘に熔けたる銀が鳴る

耕すや東洋の花うるほひて

春が来る野や夕刊を配り余し

若布刈棹淡路の山の秀より高

禁男の樅の厚戸や梅の花

紅梅若き一票の手伏せ書き

虻をのがれず復活祭の花抱へ

舟で行く縁故投票げんげ流し

春泥を来てこの安く豊かなめし

ぶらんこの春昇天す親不知

かがむままごと雪代のふくらむよ

耕牛の呑まぬ濃紺たひらな沼

たんぽぽの折目乳出て新社員

芝能や老梅の苔剥げめくれ

紅梅を瞼の花に薪能

鍬の柄に天地の春の顎あづけ

雨粒小僧復活祭の池にはね

濃みどりの茶摘の三時唄も出ず