和歌と俳句

加賀千代女

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浮島を青う突出すかな

柳から残らず動く氷かな

うち外を鳥の仕事や神の花

どち向きて見送る筈ぞ花曇

ふた夜三夜寝て見る花やよし野山

みよし野やころび落てもの上

月影も彳むやのあさぼらけ

見送れば墨染に成花になり

東路のはしづかにさかりかな

白妙もいつしか暮て花の山

筆とるや見ぬ神花の夕けしき

あしとめて駒もに夕哉

何の実と問ふてしりぞく桜かな

眼をふさぐ道もわすれてかな

月の夜の桜に蝶の朝寝かな

見ぬものを見るより嬉しさくら花

裾はゆる都のうちのさくらかな

大事ないといはぬばかりぞをそざくら

短冊は風をあつかふさくら

朝夕に見ぬ森からも桜かな

晩鐘を空におさゆるさくらかな

きのふけふものに墨引花見

道くさに蝶も寝させぬ花見

広瀬にも穴のあくほど桜狩

花もりや人の嵐は昼ばかり