和歌と俳句

加賀千代女

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

言さして見直す人や朧月

行過て見直す人や朧月

水影をくめどこぼせど朧月

払ふ事松もかなはず朧月

うくひすは起せどねぶる

さそふ水あらばとぬるるかな

ながれては又根にかへる柳かな

のびる程恐しうなる柳かな

一もとは音なき月のやなぎかな

雲に届く近道知て柳かな

花咲ぬ身はふり安き柳かな

結ばふと解ふと風のやなぎかな

見るうちにわすれて仕まふ柳かな

手折らるる花から見ては柳かな

松原に柳は春の夕かな

吹分る柳は青し馬の髪

青柳はどこに植ても静なり

青柳やはきあつめては雪まろめ

青柳や何の用意に寝てばかり

青柳や終に燕にあふむかす

青柳や春のしらべもふところ手

昼の夢ひとりたのしむ

釣竿の糸吹そめてまで

晩鐘のつり合もよき柳かな

百とせにもう一眠り柳かな