和歌と俳句

加舎白雄

陽炎やしづかなる日の敷がはら

糸遊に児の瞬きやさしさよ

海はれて春雨けぶる林かな

春さめのこゝろながくも降日かな

春雨や傘さしつれし浜社

朧夜や誰か寝て行鹿島舟

春の水藻臥の蜷も得たりけり

山焼やほのかにたてる一ツ鹿

越わびて淋しうなりし焼野哉

いとまなき世や苗しろの薄緑

なはしろに鴎追るゝ磯田かな

はつむまやななつの年のくゞり道

涅槃会や身は寺入の穀つぶし

去年よりことし仏のわかれ哉

藪入や桃の径の雨にあふ

凧空見てものはおもはざる

葛飾もわたすわたし守

旅人の窓よりのぞくひゐなかな

蝋燭のにほふ雛の雨夜かな

歩み来ぬ岬のなりに汐干狩