和歌と俳句

芝 不器男

蘖に杣が薪棚荒れにけり

鳥の巣やそこらあたりの小竹の風

水流れきて流れゆく田打かな

石楠花にいづべの月や桜狩

うまや路や鶯なける馬酔木山

うまや路の春惜しみぬる門辺かな

森かけてうちかすみたる門辺かな

ふるさとや石垣歯朶に春の月

春の雷鯉は苔被て老いにけり

春雪や学期も末の苜蓿

奥津城に犬を葬る 二月かな

松籟にまどろむもある遍路かな

中二階くだりて炊ぐ遍路かな

鞦韆の月に散じぬ同窓会

風早の桧原となりぬ夕霞

遍路宿泥しぶきたる行燈かな

飼屋の灯母屋の闇と更けにけり

白藤や揺りやみしかばうすみどり

畑打に沼の浮洲のあそぶなり

杉山の杉籬づくり花ぐもり

板橋や春もふけゆく水あかり

落椿独木橋揺る子はしらず

空の光りの湯の面にありぬ二月風呂

櫟より櫟に落つる椿かな

卒業の兄と来てゐる堤かな

古雪や花ざかりなる林檎園