春宵や畳の上の米俵 茅舎
眼つむれば若き我あり春の宵 虚子
春宵のもとゐに若き我なりし 虚子
衝立の繍ひ鳳凰も宵の春 烏頭子
春宵や旅立つ母にこれの杖 茅舎
ひるがへるくちびる紅し春の宵 草城
相反くひと等美し春の宵 鷹女
オルガンのはたとやみけり春の宵 立子
春宵の枕行燈灯を忘る 蛇笏
ふり向きしうしろに月や春の宵 淡路女
春の宵灯ともれば灯にひびく水 草城
春宵や風なくなりし田圃道 立子
春の宵なほをとめなる妻と居り 草城
春宵や人の屋根さへ皆恋し 石鼎
たへがたう心ふと濃し春の宵 石鼎
春宵や駅の時計の五分経ち 汀女
くちあたりよき水ぐすり春の宵 草城
わだなかの巨きな舶の春の宵 草城
笙鳴るや「林歌」に連るゝ春の宵 かな女
風車春宵の闇に翼をひたし 青邨
春宵の此一刻を惜むべし 虚子
春宵の障子にひゞく水の音 占魚
咳やみて春宵さらに更くるのみ 占魚