和歌と俳句

河東碧梧桐

焼石に虎杖角を出しけり

虎杖や古屯田の墓所構

駅鈴をしばきく日なり炉塞ぎぬ

門いづこ家ある池や蘆の角

蘆芽ぐみ水満ち魚網新たなる

春雨や諸国荷船の苫の数

春雨や何彫る君の不退転

貸家に厩あるなり落椿

掛け昆布や霜の名残の三棹程

根ツ子焼く烟絶えずよ春の霜

何となく牧車通へり春の山

いち遅き船も卸しぬ青を踏む

閘門を藻草閉ぢけん汐干かな

兵村の歌うたひけり畑打

畑打つて藤一棚も培ひぬ

九条まで町の木立や飛ぶ

噴火口に奇しと見る岩燕かな

幕かへすやうに落花をふるひけり

韮萌ゆる畑見つゝ来れば辛夷

砂川の松こまやかや蜆取

山にある垢離場の水やむら躑躅

関守の活けたる赤城つつじかな

野に遊ぶ歌に行人唱和かな

海に浸る檜の匂ふ遅日かな

風立てばの奥も波白し