牧水
土壊を ふせぐと植ゑし 天城越の 道の榛の木 みな実を持てり
牧水
天城道 三椏畑の 側ゆけば その花にほふ 雪に濡れつつ
牧水
天城山 わが越ゆる道の 杉の木に 降り積る雪は 枝垂れそめたり
牧水
天城嶺の 森を深みか うす暗く 降りつよむ雪の 積めど音せぬ
晶子
波帰る 天城の嶺の しら雪の ここより海へ くづるる如く
晶子
白帆浮く 伊豆の天城の 山の霊 大わたつみに 出でて遊ぶ日
晶子
靄上り 天城の嶺の ふくらみぬ 下の百山 皆とろけ去り
晶子
天城山 まことに雲の 凍りたる つららと知りぬ 頂にして
晶子
自らの 車がたぐる 紐と見ゆ 天城の渓の うねうねの道
晶子
頂を 今日は網代の 奥に見る 天城の渓の 雪消えぬらん
晶子
伊豆の方 天城の山の 半をば 雲もち去りぬ 曇ると無しに
赤彦
葦枯れの いづれの山を 人に問ひても 天城の山の つづきなりといふ
茂吉
ひがしかぜ 吹きしくなべに ここよりぞ 天城の山は おほにくもれる
枯澄みし天城を縫ひてバスの揺れ 波郷
白秋
春天城雪の鎮めと伊豆びとは何をもて遊ぶ歌をもて遊ぶ
天城嶺の間の草山焼かれたり 立子
天城より水迸り山葵咲き 青畝