赤人
田子の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける
古今集・恋 よみ人しらず
駿河なるたごの浦浪たゝぬ日はあれども 君を恋ひぬ日はなし
信明
わが恋は なぐさめかねつ 駿河なる 田子の浦波 やむときもなく
拾遺集・雑春 能宣
田子の浦に霞の深く見ゆるかな藻塩の煙立ちや添ふらん
俊恵
風をいたみ 田子の浦わを 漕ぎゆけば また寄せ来るか 岸の藤波
崇徳院
田子の浦いはねにかかる藤波は満ち来る潮の聲をかるらむ
新古今集・雑歌 嘉陽門院越前
沖つ風夜寒になれや田子の浦の海人の藻鹽火たきまさるらむ
良経
知らせばや恋をするがの田子の浦うらみに波の立たぬ日はなし
雅経
駿河なる 田子の浦波 うらなれて 春はかすみの たたぬ日ぞなき
実朝
田子の浦の岸の藤波たちかへりおらではゆかじ袖は濡るとも
田子の浦に富士の高根や御代の春 許六
十月の鶴見つけたり田子の浦 子規