和歌と俳句

盂蘭盆

焼け跡に盆の衣きて子はあそべ 波郷

新盆や絵巻は雲の帯長く 草田男

にぎやかに盆花濡るる嶽のもと 蛇笏

盂蘭盆やこよひきこえず波の音 万太郎

ゆく路に夕かげの浮く盆会かな 蛇笏

盆の鴉啼くこと思へば啼く顔で 耕衣

盆の路傍水銀色に舞ふをみな 草田男

友も子の新盆参りの留守の下駄 草田男

盂蘭盆会遠きゆかりとふし拝む 虚子

三年前は往時や盆僧あまり若し 草田男

アパートの鉄梯盆僧ただ登る 草田男

もの食ぶも食ぶるを見るも盆あはれ 草田男

「過はくりかへさぬ」碑盆来る 青畝

北洋を帰りし盆の街の漁夫 青畝

新盆やひそかに草のやどす露 万太郎

新盆や桔梗に百合にかよふゆめ 万太郎

新盆や切子藤浪與兵衛作 万太郎

盂蘭盆や道であひたる俄雨 万太郎

長つ尻いつものことや盆の客 万太郎

盆来る桔梗ゆめみるごとく咲き 万太郎

盆来るこの二三日の萩の伸び 万太郎

ほゝづきのあからめるさへ新盆や 万太郎

大塔川盆供ただよふ瀬々の雨 秋櫻子

盆路の猪垣越えてなほ遠し 秋櫻子

青萱の出穂のしづかに盆の空 蛇笏

リュックサック負ひ去る能登の盆の僧 誓子

女童らお盆うれしき帯を垂れ 風生

軒提灯家紋いかつく盆が来る 林火

くさぐさの盆供みどりのまさりけり 林火

袂に風入れて遊ぶよ盆の子ら 林火

立ちかこむ杉真青に盂蘭盆会 秋櫻子

南方にさまよふ魂を盆供養 青畝

盆太鼓まだ眠れざる患者らに 波郷

四万の湯の宵の大雨や盆の入 秋櫻子

わざをぎの盆の湯治や鳳仙花 秋櫻子

病室を風ほしいまま盆太鼓 波郷

盆は皆に逢うて踊つて一夜きり 林火

新盆や風しわしわと明け来る 静塔

山猿の内腿白し盆やすみ 静塔

盆の荒れ三方岩の壁の海 誓子

盆の僧額の丘を光らせて 誓子

盂蘭盆や参りかむさる小佛壇 爽雨

さしのぞく小写真盆の佛壇に 爽雨

盆迎ふ山中鳥語耳満たす 林火

旅人の墓も洗はれ盆が来る 林火

盆夕べ佛壇の灯に賑へる 林火

越中八尾 風の盆

日ぐれ待つ青き山河よ風の盆 林火

風の盆遠ひぐらしのひとつきり 林火

風の盆編笠の上は星ばかり 林火

流し組みて幼なじみよ風の盆 林火

泣くごとく胡弓風出て風の盆 林火