天瓜粉に笑むや二つのさきがけ歯
一抹に長き雲の朱夏芭蕉
長雨のあとの風寒麦の秋
コスモスや二戸相倚れる柿葺
緋の欅畳にあそび枯木宿
白ふぐりつけて駆りぬ冬木犬
口開いて矢大臣よし初詣
畑打つや土よろこんでくだけけり
入学児胸呑ませ穿く長袴
壷焼きや障子砂風に飛ばむばかり
ちらちらと家並つづきや東風の藪
提灯に水おとなしき代田かな
夕土の昏き文目や落雲雀
掛梁へ上下する雑魚たのもしき
星掛て地にうす影や花樗
新縄や笋にかけたのもしき
鴟尾今日の日を失へば夕牡丹
市の城夜寒く松のかたまりて
秋晴や医者通ひしてあるき読み
秋雨や二つ見出でて峡の鳶
秋雨や火の下出でし夕芥火
墓の頭へ露樹間遠に落雫
せきれいや渚を消えて又居れり
早紅葉はさまる森となりにけり
白萩の枝をながれて咲きそめし
今朝からの日和うしなふ時雨かな
刺生きて交れる茎や枯葎
玉霰くぐるばかりや枯いばら