ひともとの椎にそそぐや春の雨
春雨や蜷這ひ上る庭の石
淡雪の中に着て居し電車かな
春の雪薮につもりて輝けり
春雪の解くるが如く卒業す
雪解や妙高戸隠競ひ立つ
雪解風暁の戸を打ち居たり
春泥や夕刊飛んで地に落ちず
船上ぐる人の声かや春の海
春の海や暮れなんとする深緑
春の田に埃掃き出す坊主かな
幼児の足さぐり得つ春炬燵
われと子と命尊し二日灸
春眠をうつ春霞春あらし
土雛ありとしもなきあぎと哉
菓子を切る包丁来たり雛の宿
ふららこを掛けて遊ぶや神の森
遠き祖の墳墓のほとり耕しぬ
炉塞や一枝投げさす猫柳
炉塞いでしとね並べぬ宿直人
炉塞いで人逍遥す挿木垣
麗かや大荷物をおろす附木売
口とぢて打ち重りつ種俵
種まくや火の見梯の映す水に
種俵大口あけて陽炎へり