和歌と俳句

藤原顕季

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わがやどに なほ掘り植ゑむ 山吹の 花のをりにぞ 人も訪ひ来る

つくづくと 思ひあかしに 舟とめて みやこの方ぞ ながめられける

ほととぎす やそ山までに たづね来て ただ一声は きくべきものか

妹が門 われ過ぎゆかむ 出でて見よ 恋にやつれて なれる姿を

群れてゐる たづのけしきに しるきかな 千歳すむべき やどの池水

さつきやみ くらぶの山の ほととぎす 声はさやけき ものにぞありける

さみだれに 安積の沼の 花かつみ 底の玉藻と なりやしぬらむ

千載集・恋
夜とともに 行くかたもなき 心かな 恋は道なき ものにぞありける

夏衣 たちきる日より 今日までに 待つに来なかぬ ほととぎすかな

かた糸の おもひ乱るる ころなれや ことづてずとも 逢はましものを

まだし今は やこゑの鳥も なきぬなり 何おどろかす 水鶏なるらむ

葺き板の 割れて洩りくる 月影の 恋ひしき人と 思はましかば

けふもなほ ふなでもの憂し ほととぎす 声たかさごに たえずなくなり

わぎもこに 今はあふみと 思へども ひとめもる山 苦しかりけり

さみだれの 空をながめて 過ぐせども 絶えて音せぬ ほととぎすかな

ほととぎす 軒のしづくに おとなしの おとせぬうらみ 誰もせましや

ほととぎす 嘆きの森に あかずして 君が待つをば 過ぎにけるかな

ゆふづくよ むすぶ泉も なけれども 志賀の浦風 涼しかりけり

水無月の 照る日といへど わがやどの 楢の葉風は 涼しかりけり

箱根なる ねろのにこ草 にこやかに つれなき人を 見るよしもがな