よみ人しらず
みちのくの安積の沼の花かつみ かつ見る人にこひやわたらむ
よみ人しらず
あひ見ずは恋しきこともなからまし 音にぞ人をきくべかりける
つらゆき
石上布留の中道 なかなかに見ずは恋しと思はましやは
ふぢはらのただゆき
君といへば 見まれ見ずまれ 富士の嶺のめづらしげなくもゆるわが恋
伊勢
夢にだに見ゆとは見えじ 朝な朝なわがおもかげにはづる身なれば
よみ人しらず
石間ゆく水の白浪 立ちかへりかくこそは見め あかずもあるかな
よみ人しらず
伊勢のあまの朝な夕なにかづくてふ みるめに人をあくよしもがな
とものり
春霞たなびく山のさくら花 見れどもあかぬ君にもあるかな
ふかやぶ
心をぞわりなき物と思ひぬる 見るものからや恋しかるべき
凡河内みつね
かれはてむのちをば知らで 夏草の 深くも人のおもほゆるかな
よみ人しらず
飛鳥川ふちはせになる世なりとも 思ひそめてむ人はわすれじ
よみ人しらず
思ふてふ言の葉のみや 秋をへて色もかはらぬ物にはあるらむ
よみ人しらず
さむしろに衣かたしき こよひもや我をまつらむ 宇治の橋姫
よみ人しらず
君やこむ我やゆかむのいさよひに まきの板戸もささずねにけり
素性法師
今こむといひしばかりに 長月の有明の月を待ちいでつるかな
よみ人しらず
月夜よし夜よしと人につげやらば こてふににたり またずしもあらず
よみ人しらず
君こずはねやへもいらじ 濃紫わがもとゆひに霜はおくとも
よみ人しらず
宮城野のもとあらの小萩 露をおもみ風を待つごと 君をこそまて
よみ人しらず
あな恋し 今も見てしが 山がつのかきほにさける大和撫子
よみ人しらず
津の国のなにはおもはず 山城のとはにあひ見むことをのみこそ